女子プロバスケットボーラーが伝授!
「コミュニケーションの極意」とは!?


ネオジャパンは、今年5月、女子プロバスケットボールチームである「東京羽田ヴィッキーズ」のスポンサーシップを継続することを発表。「地域と共に歩み、皆をもっと元気にする」ことを信条として活動するヴィッキーズ。その想いに共感して契約更新となったわけだが、一流アスリートが考える『人を元気にする極意』とは何なのか。今回は同チームで活躍する水野菜穂選手と樺島ほたる選手にお話を伺う機会を得た。あらゆるビジネスにおいて、「コミュニケーションの力でビジネスパートナーと良い関係性を築く」のは基本のキの字。我々ビジネスパーソンにも、彼女たちから学べることは大いにあるに違いない。

Q.お二人のこれまでのキャリアを教えてください

水野: 小学校3年生の時に、友だちに誘われて学校のミニバスケットボールクラブに入りました。それまでバスケットボールのことは良く知らなかったので、まずは見学させてもらって。見てみると、練習はもちろんなんですが、鬼ごっこをやったり、遊び感覚で楽しそうだな、と思って。そこからハマっていって、中学・高校でもバスケを続けて、大学は東京医療保健大学に入学。そこでもバスケットボールに打ち込みました。4年生の時にインカレで準優勝出来たのは良い思い出です。卒業後、今とは別のチームで5年間過ごし、昨年移籍を出してヴィッキーズに来て1年経ちました。

キャリアを振り返るとバスケ一筋という感じですが、環境が変わるたび、「このままバスケを続けるべきかな」と毎回悩んだんです。節目で、勉強を取ろうかバスケを取ろうかとか、他の職業に就職しようとか…。でも結果としてバスケを続けてこられたのは、目の前にある目標に対してただただ一生懸命やっていたら道が拓けたというか。自分のためというより、人のため、というのが大きかった。チームメイトやファンの方、家族や仲間の期待に応えたいと思ってがむしゃらにやってきたら、今の場所にたどり着いていたという感じです。

樺島: 私は福岡県の出身ですが、先輩に誘われて、小学校2年生の時にミニバスケットボールのクラブに入部しました。中学校では、親元を離れて別の市にあるバスケットボールの強豪校へ。その後は愛知県の桜花学園高校、筑波大学と進学しました。その間もずっとバスケを続けて、昨年、プロになって初めてジョインしたチームがヴィッキーズです。

水野さんと異なり、「私にはバスケしかない」という気持ちでずっとやってきました。「自分はまだまだできるはず」「もっと上に行きたい」という一心でしたね。

Q.練習の大切さについて

水野: 私たちプロスポーツ選手にとって、「練習の質」を高めることが何より重要だと思っています。意識しているのは、「試合以上の強度でやる」こと。試合はもちろんシンドいですが、それ以上に追い込むと、試合が楽に感じるようになってくるんです。とはいえ、時には折れそうになる時も(笑)。そんな時には、一旦バスケから離れて、何も考えずに一人でのんびり過ごしたり、リフレッシュして気持ちを切り替えますね。あと、私、個人競技は向いていないのかな、と思うんですけど、バスケはチームスポーツで、周りに頑張っている選手がたくさんいるので、周囲の選手から刺激をもらって、自分を鼓舞して、という感じです。

樺島: 私はチームの中で一番若い選手の部類に入るので、それを武器に、とにかく練習量や元気さ、コートを縦横無尽に走り回る、といった部分では誰にも負けないようにと心がけています。あとは、練習で「実力を全部出しきること」。練習で出来ないことが、試合で出来るわけがないですから。

ツラい時には、マネージャーが同級生なのもあり、彼女にいろいろ想いを吐き出してすっきりしています。彼女、聞き上手で、いつもしっかり受け止めてくれるんです。

Q.ここぞの場面(試合)で心がけていること

水野: 私、本番で結構緊張してしまうタイプなんです。と言っても、ガチガチになるということではなく、妙にテンションが上がってしまうという(笑)。そんな時はそのテンションに身を任せつつ、「楽しもう」と心掛けていますね。まだまだ完璧には出来ないですが、苦しい時間帯も、前向きに「ゲームを楽しむ」というモチベーションになれたら強いだろうな、って。とにかく「逆境をバネに変える」意識を持ちたいと思っています。

樺島: 私も、学生時代はそうでもなかったんですけど、プロになってから緊張するようになりました。プロは、張り詰めているレベルが段違いですからね。そんな私のやり方は、緊張している時には周囲に「緊張している」と打ち明けてしまうということ。以前誰かに、「人に言うと緊張が和らぐよ」と言われたことがあって。そんなことはなかったんですけどね(笑)。でも自分の状態を人に伝えることで、客観的になれるというか、吹っ切れる感じがあるのは確かです。

Q.年齢を重ねるということについて

水野: 私はいま28歳ですが、プロスポーツ選手としては、ここ数年、かつてほどの「回復力」が失われている感覚はあります。もっと若い頃は、自分自身の体のケアをそんなに重視していなかったので、軽くストレッチして、時々マッサージを受けるくらいでした。ただ最近では、それでは回復しきれなくなってきたので、食事もそうだし、練習の仕方、身体のケアの仕方も気を遣うように。でもそれって、単純に「身体の衰え」というネガティブな変化ではなく、歳を重ねるごとに自分の体に耳を傾ける能力が研ぎ澄まされているということだと思っています。

Q.チームメイトの存在

水野: チームメイトは、ずばり「自分を律してくれる存在」ですね。周りのみんなが頑張っていれば「自分も頑張ろう」と思えるし、チームメイトの成功は、自分のことのように嬉しいんです。その一方で、「自分ももっと頑張らないと」「悔しい」という気持ちも芽生え、バネにもなりますから。

樺島選手は、誰よりも活発にコートを走り回る、元気印そのもの。彼女を見ていると、誰よりも「自分も頑張らなきゃ!」と思う。他に代えがたい存在ですね、ありがたいです。

気の置けない仲間というのは、心からの信頼関係が構築できている存在だと思います。時にはなれ合いではなく、厳しいこともちゃんと伝えられる。それが真の仲間じゃないかな。人って嫌われたくないから、仲が良いほど本音を言いづらくなってしまいがちじゃないですか。それを乗り越えて、お互いの成長のために本音を言い合える。そんな関係性で居たいと思っています。

樺島: チームメイトは、嬉しい時、苦しい時に「刺激し合える」存在だと考えています。そして自分がいつかこのチームを辞めたとしても、一生、大切にしたい仲間で居続けたいな、って。中学・高校のクラスメイトも良い関係性だと思いますが、やはりバスケを通じて出来た仲間は今でも掛け替えの無い存在です。

私が考えているのは、チームメイトに何か厳しいことを伝えなきゃ、という時は、一つ上の人にまず伝えて、その人がその上の人と仲良かったりするので、そうした経路を通じて伝えたりとか。「この人とこの人は会話するだろうから、この人にインプットすれば」みたいな(笑)。ビジネスパーソンの方もそういう「根回し」みたいな場面があるかもしれませんが、そういうことを自然にしているかもしれませんね。

水野: 私は自分から話すより、聞くのが好きなタイプ。今のチームでは、話すのが好きなタイプの選手が多いので、まずは自分が「話しかけやすい雰囲気」を作ることを心がけています。

樺島: 水野さん、めちゃくちゃ話しかけやすいです(笑)。
私は、反対に「話すタイプ」です。普段は敬語を使いますが、距離を縮める場面では、敢えてため口で話したりとか。特にお酒が入った時には、そのへん乗り越えてズカズカ行っちゃいますね(笑)。

Q.今後の目標について

水野: まずはこのチームでプレーオフに入るというのが、直近の目標です。去年、移籍した時に「(ヴィッキーズに)来てくれてありがとう」という言葉を幾つも頂けたんですが、それをまだ結果で返せていないので。あと、もう少し大きな視点でいうと、バスケットボールを通じてもっと成長して、いろんな人に恩返ししたいですね。

実は私、ディズニーリゾートが大好きで、もしバスケットボールの選手になってなかったら、ディズニーのキャストになりたかったんです。今の職業も、ディズニーも、「人を笑顔にする仕事」かなって。私の性分なんだと思います。

樺島: 私も、水野選手と一緒で、まずはリーグで8位以上に入ってプレーオフに進出することが目標ですね。あとはチームにとって「必要な存在」になれるように頑張りたいです。今のチームは良い人ばかりで、水野さんをはじめ、周りに素敵な女性がたくさんいるので、自分もそういう風になりたいな、と憧れています。試合の時は果敢に攻めていても、普段は「ほんわかした柔らかいイメージの女性」で居たいですね(笑)。そんなギャップのあるキャラになれたらと願っています。

はにかみながらも、眼の奥に芯の強さを感じさせる水野選手と、“元気印”の言葉通り、若さと天真爛漫さを隠し切れない樺島選手。対象的な二人ではあったが、お互いを信じ、尊敬し合う関係性は盤石そのもの。ビジネスパーソンの仕事は、時にソロプレーの時もあるが、多くはチームワークが成果を決定づけるもの。多くの言葉を語らずとも分かり合えるパートナーと共に、仕事後の達成感を存分に味わいたいものだ。